華麗なる旅行

metaku2004-04-16

如月のカレー好きといえば、市井の膾炙するところであるが、自分はカレーさえ食べていれば世界で一番幸せな男である。そして今朝10分早く家を出たのは、そのカレーの為なのだ。というのも、今日は新宿駅のスタンドカレー屋「C&C」の新装開店日なのだ。
如月は学生の時分には「C&C」を年間100食は食べ続け、外食を控えたこの数年でも年間50食以上は食べ続けている。つまり、三度のメシよりロックが好きな如月ではあるが、メシを食わなきゃ死んでしまうってんで、オレの荒ぶるロックよ、静かに流れよってことにしておいて、今日はカレーを食いたいの。
で、「C&C」に向うと、どこで聞き付けたのか浅ましいハイエナどもが列を成して店先にならんでいるではないか。呆れた奴らだ。朝早くから、カレーなんて胃にドカーっときてルカーっと叫んでしまいそうなものを食したいがために並んでいる安サラリーどもめ。と思ったら、実は自分もそのカレーを狙う安サラリーであることに気がついた訳で、まいったなぁなんて口に出して言ってみたものの、連絡通路の真中で思案するボクはただの邪魔者である。
考えてみれば、マック食べたいという御仁に逐一「いや、マックは商標だから。正確にはハンバーガー食べたいでしょ」と訂正してきた如月なので、ここは一つ寛大な気持ちで「C&Cが食べたい」から「カレーが食べたい」にシフトチェンジすることにした。で、構内にもう一軒あるカレー屋に向かう事にした。

このもう一軒のカレー屋というのが、得体の存ぜぬ外国人に「イラシャイマセー」を連呼させることに、みせの体面を賭けている様な、つまり、アジア系外国人店員が言葉の意味も解からずに、とりあえず言っとけと教育されたのか、スプーンを口に3回運ぶと1度、の割合で、「イラシャイマセー」と諳んじる、そんな店なのだ。ロウバジェットな異国情緒なのだ。
ボクは仕方なしに、その店の暖簾をくぐり、つーか、普通に開きっぱなしの自動ドアを通り過ぎただけなんだけど、近くのイスに座って、買った食券(モーニングハンバーグカレー)をテーブルに置いた。するとまもなく、白いプレートに乗せられたそれは、「イラジャイマステー」と言いながらアジア系外国人店員によって運ばれてくるのだけれども、日本語前より拙くなってねえか、とも思うが、それはフロアマネージャか誰かに任せるとしてだな、まあいい、ボクはモーニングハンバーグカレーを食すことにした。
プレートの上には、ライス、フライドポテト、コールスローサラダ、得体の知れないサラダ、ゆで卵、が乗っており、450円でこのヴォリュームは凄いなと感心する。さすが「C&C」とシノギを削るライバルショップ、このくらいのサーヴィスでもしないと客が離れていくのを知っているのだろう。また遠くで「イラジャイマステー」と聞こえた。そんで、最後にはでかいハンバーグが白米とシンメトリックに並べられ、存在感をアピールしている。さて・・・・、ん?何か足りなくね?そう如月のカレー勘が本能的に告げる。首の後ろ辺りがざわざわする。いや、そもそもカレーが無い。あるんだけど、少量がハンバーグに掛かっているだけである。つまり、これでは、ハンバーグのカレーソース掛け定食である。木こり風ならぬ、インド人風に他ならない。つまりアジア系外国人店員は、ほぼ水平のプレート皿に、ライス、フライドポテト、コールスローサラダ、得体の知れないサラダ、カレーを盛りつけたものの、カレールーのスペースが無くなり、ハンバーグの上に申し訳程度に垂らしたと、如月は考察する。
しかし、そこで腹を立てるのは間違いかもしれない。なぜならば、この「イラジャイマステー」は、カレーとはこういうものであると、認識しているかもしれないのだ。ライスの脇に並べられたほぼ同じ表面面積のハンバーグ。カレーを知らなければ、誰しも、主食はご飯とこいつではないかと推察すると思う。まさかそこに掛けられたソースが主役であろうとは思うまい。それどころか、必要以上に掛けられたカレーを見て、「日本人ッテ盛リ付ケノ美的センスナイデステー」くらい思われているかもしれない。しかたない。甘んじよう。オレ、盛り付けのセンスのない日本人の一人でいいッス。
それより、早く食べ終わらねば電車に乗り遅れる。ボクは残りを大急ぎで詰め込み、店を出た。改札の前で定期券を探して、ジャケットのポケットをまさぐったら、切符ほどのミシン目のある小さな紙がでてきた。先ほどのモーニングハンバーグカレーの半券である。

それをよくよく見ると、そこには「ハンバーグ/450円/2004.4.16」と印字されていた。もしかしたら、ボクが食べたのは本当にハンバーグのカレーソース掛け定食だったのかもしれない。そう思ったら、昼にカレーが食べたくなった