オレの髪型100万円

metaku2004-05-21

給料日直前ってことで金ねえな。ん〜でもおかしい。普通に働いていて、自炊して、無駄な出費を控えている自分が給料日に金欠に陥るというのはおかしいのである。そして、さらにもう一つおかしいのは、今朝目が覚めたら、枕元に見たこともない漫画本が積み上げられていた事なのである。

ヒイイイイイイイイイイイ〜!なぜこんなものがボクの部屋に・・・・。と思ったその瞬間、針金に微弱な電流を流したような天啓がピキーンと頭を横切り、ボクは事の真実を見抜いた。そんで、自分は密閉された部屋をゆっくりと見渡して、クローゼットに当たりをつけた。そして、極力押し殺した声で「そこに隠れているのはお見通しだ。人の金で漫画を買った大悪党め」と言った。

シーン・・・。返事はない。つまり、ヤツは黙っていればまだ逃げ遂せると思っているのである。この痴れ者。能の足らぬ不具者め。そこで自分は、半歩近寄り、ムアツ布団をクローゼットの前に積み上げた。「もう出口は塞がれたぞ。観念したらどうだ!」

シーン・・・。手強い相手である。それもそのはず、相手はただの泥棒ではない。ヤツは知らぬ間に如月の財布から最後の紙幣をくすねて、そして如月が寝ている間にそのお金で購入した漫画を・・・まあここは読破したと仮定してよいだろうが――それを月明かりで読み終え、すぐ逃げると思いきや、指紋やら不自然な施錠状態に恐れを感じて、如月が外出するまでクローゼットに隠れて別な逃走ルートを探るような人物なのだ。そこには超人的な精神力、忍耐、集中力そして猟奇的行動性が秘められている。

中途半端な説得では出てこない。そう感じた如月は、丸めた新聞紙とライターを持ち、閉まっているトビラに向って怒鳴った。「今、ボクは右手にライター。左手に新聞紙を所持しておる。聡明なキミなら判ると思うが、返事がない場合、クローゼットに燃え盛る新聞紙を投げつける。みすみす死ぬのは本意ではないだろう。一言謝れば許さないでもない!」シーン・・・。「許さないでもない」シーン・・・。「・・・・え、本当に居ないの・・・・?」シーン・・・。
「おい、はやく返事しろ!というか居てくれ!で、ないとオレはただの、ただのバカじゃないか!
シーン・・・・。



その晩、失恋以外で初めて泣いた。





【おまけ】ボクは、もみ上げ近辺の頭髪が伸びると、くるっと内巻きになるのですが、そうなるとニックネームが王子とかデルピエロとかなっちゃうので、それは年齢的にマズイというのもあって、髪の毛の野郎が内巻きに禍々しく曲がり始めたらビューティーヘアサロンに赴くことにしています。しかし、今回は給料日前の金欠もあって髪の毛の禍々しいのを止める事ができません。誰か美容師さん。オレを助けてくれ。このうずまきから救い出しておくれよ!(訳者注:つまり遠まわしに無料でカットして欲しいと言っています)