metaku2004-05-19

週が明けたら、めっきりとやる気が失せていて驚いた。アイドルとかアニメとかどうでもいいし、女の子にも音楽にも関心がもてない。ボクは単なる魂の器と化したのれす。それにしても蒸し暑い。蒸し暑いなあ。蒸し暑い夜なのだ。なのでボクは、たった一つしかない部屋の窓を開けることにした。カーテンが風にはらりと棚引いて左右に流れると、夜の世田谷が眼前には在る。
ほら、いつも見慣れた大家の庭があって・・・そうそうあの趣味の悪い鉢植えとかね、ステンレスの錆びない物干し竿とかね、あと城ね・・・え、なんだ?なんだ、あの城は!そう、遥か向こうの崖の上には、古城が不自然なまでの説得力を放ち聳え立っていたのである。

闇に泥んだ空と大地が境界線を消して視覚を曖昧にする。普段ならば、国道20号線のアスファルトから、空に向って照射された光が加わって、埋もれた空と建物に遠近感が生まれるので、そら観て御覧、あれがオリオン座だよなんつって、莫迦な男女の対子(トイツ)がニコニコしながら夜空を見上げる指標と成りえるのであるが、その空を真中で分断する格好で城がでんと構えているので、オリオン座などどこにも観えぬ。そして気が付けば、いつの間にか、やる気はもとより、20号線の薄明かりまでも消え失せたようである。

そして、自分には一つの疑念。そういったものがふつふつと湧き立つ。ああ、きっとオレのやる気はあの城に盗まれたのだな。誰かが掠め取ったに違いないよ。そう思うと、怒り・・・は覚えず、代わりといってはアレだが、倦怠感が増すばかりで少々旨くない。

さてどうしたらよいものか・・・とは言いつつ、自分は今晩も、夜になると現れるあの城を臨みながらビアを飲んでぐでぐで過ごすのだろう。ぐでぐでと過ごす。
過ごすまでだ。