適当

metaku2004-03-13


実家に帰ると、お袋が開口一番「ブローバンドよ」と言った。で、自分は靴を脱ぎながら「ああ、ブローバンドね。下手なバッターはみんなブローバントしちゃってゲッツー取られるよね」みたいな適当なことをぬかしていたのであるが、よくよく考えると、ブローバンド・・・BB・・・広末涼子・・・あれ?野球じゃねえぞ、と。そもそもブローバントなんて用語ないぞ、と、しばし腕組をして、しかるべき後に、ふと茶の間に目を遣ると、テーブルの上に、パーソナルコンピューターがでんと鎮座しておる。
すると、お袋は次から次へと、そのパーソナルコンピューターの自慢を始めるのだ
が、それはどうでもいい。問題は配線やらなにやらで狭くなったテーブルの片隅に食事を置かれたことだ。モニターの背面を眺めながら、小鉢の煮物を摘まむと、それはもう侘しい気持ちで一杯である。
そして、それはやがて憤怒へと変わり、とうとう最後には「オレはまだお前を認めたわけじゃないからな」と、レッドに楯突くブルーの心境になった。
こうなったら持久戦だ。いいかい、そこで偉そうに座っていても、お前から挨拶をしない限りオレはお前を如月家の一員とは認めない。そんな見えない攻防が繰り広げられている最中、お袋が「これゲームもできるのよ」と、『人生ゲーム on line』を如月に勧める。はあ、じゃ一寸だけ、でも好きでやるんじゃないからなと、画面に向かって早2時間、気がつけば夢中でマウスをクリックしていた。そして、ゲームを終え、煙草に火をつけた如月はパーソナルコンピューターに呟いた。
へへ、なかなかやるじゃないか、まあお前が望むなら、如月家の一員に認めてやってもいいけどよ・・・。するとヤツは一言「ウイーン」と体を震わせた。
その日、オレに弟ができた。